引退を見据えて…東武350系きりふり号で日光まで完走する乗車記
こんにちは。くさせんべいです。私の地元駅からはるばる、浅草駅までやってきました。日付入れたのはキセルしてない証明。
※乗車記の流れの都合上、時系列を改ざんしています。
今回余計な運賃を払ってまでわざわざ浅草駅まで来たのは、特急車両350系に乗車するため。※正確には350型ですが、東武関係でもかなり表記ゆれが多いため「系」を使います。
350系といえば、最近浅草ー宇都宮で走っていた350系使用の特急「しもつけ」が廃止になったことが記憶に新しい車両。現在は土休日運転の「きりふり」が残っています。
早速ホームへ
ホームには、丁度「きりふり82号」の運用を終えた列車が。この列車は春日部を9:16に発車し、北千住曳舟とうきょうスカイツリーと停まって浅草に9:52に到着する列車。土休日運転のきりふり号の1つで、平日に運転されてないことを鑑みるに送り込み運用かと思われます(都内お出かけ層も若干意識してるかも)。
この列車は一度回送となり、とうきょうスカイツリー方面へと引き上げていきます。おそらくとうきょうスカイツリー駅すぐ近くの留置線に引き上げ、運用に向けた整備かと思われます。
←ココ
過去写真
この車両をざっくり説明すると、不朽の名車"東武8000系"をベースに造った急行型"東武1800系"(全面真っ赤でりょうもうやってたアイツ)を、現行の200系250系導入に際し改造して誕生した列車。このとき、6両編成が300系、4両編成が350系となりました。主に急行型として活躍していましたが、2006年の種別大改編により「急行」の種別を通勤型に奪われる譲り渡す形で特急に格上げされました。
6両の300系に関しては残念なことに数年前に廃車になっております。その後はしばらく動きがありませんでしたが、2020年6月のダイヤ改正で宇都宮発着のしもつけ号が廃止。残る定期運用は土休日運転のこの「きりふり号」のみとなりました。
このきりふり号ですが、いわば350系だからこの名前で、特殊な料金体系もこの列車のために残してる、と言える列車です。運行区間も浅草~春日部~東武日光と「けごん号」と丸カブリ。まあ要するに何が言いたいかと言うと、別に350系でなくても構わない列車、ということなのです。
今はまだ臨時特急や団体列車としてまだまだ使い道があります。ですが、2021年以降には100系(スペーシア)を置き換える新型特急の導入が控えており、それはすなわち100系の余剰が大量に出るということでもあります。元々急行型だったゆえに接客サービスは時代錯誤の感が否めずさらに種車の登場から30年を余裕で超えることを考えると、新車導入に伴って臨時・団体運用ともに100系に置き換えられることはほぼ間違いなしでしょう。
※引退予測はあくまでいち鉄道ファンの予測であり、公式サイドからの発表が無い以上違う動向をする可能性は十分考えられます。
ということで今回は、この先そう長くないであろう350系運用の列車「きりふり281号」に乗車します!
350系は3編成、そして今回乗る列車はラストナンバーの353F。写真に撮ってませんが、先ほどのきりふりも353Fで、休日運用全てがダイヤ上でも1編成で回せることがわかります。しもつけ定期運用時代ならともかく、現在3編成も必要かと言うとちょっと首をかしげます。延命のためと交互に運用に入るのか、はたまた維持費が無駄だからとか部品取りのためとかで1編成廃車となるのか。
特急型では今や珍しくなりつつある幕式の行先表示機。「しもつけ」「きりふり」、鬼怒川線方面の「ゆのさと」の他に、急行時代の幕も残っており、幕回しではその一部が見られます。急行幕列車はともかく、「ゆのさと」は廃止までにもう一度は運行してほしいところですが、はたして。
指定した4号車は、夜行時代に女性専用車として活躍する車両。ですが、尾瀬夜行・スノーパルともに500系に置き換わってしまい、さらに日光夜行も100系でしか運転しないのでもう不要のステッカーなのですが…
発車時刻も迫ってきているので、そろそろ乗ってしまいましょう。
4号車12番D席を予約。といってもガラガラだったので、発車30~40分くらい前でも余裕で予約できました。特急料金は1050円。東武では土休日特急料金を採用しており、本来の土休日料金なら1470円、平日だと1360円。きりふり号だと料金が高くなる土休日において420円も安くなり、かなりお得。まあ相応の対価がありますが。
時間になると発車メロディー「Passenger」*1が流れ、まもなく発車します。この発車メロディーを聞くと、これから旅に出るんだ…!という感じのワクワク感を感じます。
日光に向け、いざ発車!
きりふり281号 運行ダイヤ
浅草 10:38
とうきょうスカイツリー 10:42
北千住 10:51
春日部 11:11/11:12
栃木 11:51/11:52
新栃木 11:55
新鹿沼 12:10
下今市 12:30/12:31
東武日光 12:39
全区間所要時間 2時間1分
列車はすぐにとうきょうスカイツリー駅へ。
とりあえず複々線区間に入る前に、車内散策をさっと終わらしておきましょう。
さて、さんざん「時代錯誤の接客サービス」とか「(特急料金の安い)相応の対価」とか書きましたが、その理由の大半がここに詰まっています。座席の手すりをよ~く見てみると、特急型にはあってしかるべきモノがありません。…そう、リクライニングレバーです。
1800系製造時に「急行用だから」…と言う理由なのかコスト面の理由かはわかりませんが、特急に準ずる急行型としてリクライニングしない回転クロスシートを設置。当時は特急はまさしく「特別な」急行であったから格差があったのは別に問題なかったのですが…350系への改造時に(1720系の廃車発生品に交換しときゃよかったものを)交換することなくまるっと流用し、そして2006年に種別大改編を行ったために「リクライニングシートですらない特別急行」なるトンデモ列車が生まれてしまいました。
さすがにこの設備で急行料金を取るのはまずいと上の人も考えたのか、きりふり・しもつけ・ゆのさと用の安めの特急料金が設定されています。これがきりふり号が安い理由。
最前列には上げ下げできるテーブル。写真はありませんが、普通の座席にも背面テーブルがついています。どういうわけか90年台に造った100系と200系からは「おひとり様利用」の考え方が抜け落ちているようで、現行の100系スペーシアけごん(きぬ)・200系りょうもう共に横から持ち上げるテーブル(上写真の座席間に見えるヤツ)しかありません。そんなワケで、500系が登場するまでは300系350系が背面テーブルのある数少ない列車でした。ひっでぇ二択だ
立てるテーブルはボックス席にしたときに活躍するのですが…今は座席横に格納する小型テーブルがついた座席も他社を中心に採用されているので、今後むしろ立てるテーブルは邪魔になりかねないですね…
後ろの方の座席は開いていたので…一番後ろの座席は戸袋となっており、駅に停車するたび扉が動くのを見せられることになります。「座席裏のスペースを荷物置きに使えるから…」と言いたいところですが、今回はどう見ても他人の特大荷物が後ろに挟まっておりました。最後尾席予約者カワイソス(´・ω・`)
デッキ部は白色が基本のやや無機質な感じですが、国鉄キハのようにステンレスむき出しでないのでそんなに暗い感じはしません。乗務員室含め運転台方面には窓というものが一切なく、前面展望・後方展望は見れません。最もこれは100系500系ともにそうですがね。
いかにもシンプルさを突き詰めた感じの車内ですが、車内は明るく狭苦しい雰囲気は感じません。
デッキと客室を隔てるドアにはオレンジの色付きガラス窓が付いてます。色付きガラス採用って、かなり珍しいんじゃないでしょうか??
3-4号車間デッキにはお手洗いと自販機。この他に、1-2号車間デッキにもう1ヵ所、つまり何故か2ヵ所も自販機が設置されてます。この列車4両編成ですよ??
あったかいのは飲めないようで
↑時代錯誤サービスその2。見栄えよくないので小さめ画像で。いまだに和式のお手洗いで、しかも手洗い場所も足でレバーを押して水を出すタイプ。JR185系にあるような独立した手洗い場というのすらなければ、バリアフリーでもないという。
3号車デッキは広めで、そこになにやら不自然な台が。公衆電話が置いてあった…と推測しますけど、デッキで声駄々洩れだということを考えると違う可能性も?
確か2号車デッキ。ここは広めに造られています。
他の号車の客室は4号車と比べそんなに大差が無かったので、省略ぅ。
そうこうしている間に北千住到着。下り列車は一般ホームを通過し日光側に設けられた特急のりばへと滑り込みます。
北千住から特急乗る用事というのが全く無いせいで、いまだに北千住特急のりばは使ったことがありません。
いくら古い車両といえど、特急列車。線形のいい複々線区間をフルスピードで爆走します。「古いから遅い」なんてこともなく、気持ちよくぶっ飛ばしていきます。そもそも古い=遅いというのは、低速が当たり前だったツリカケから新性能電車に移行する時代の話です。
350系と70000系、相当な年の差の電車がこう並んで走るというのはなかなか不思議なもの。
あっという間に北越谷を通過し列車は再び複線区間へ。なお列車の快走は止まらず、停車駅の春日部へ。春日部は距離的に常磐線でいう柏的な存在ですが、この先水戸とかいわきレベルの大型都市が無い点では違います。ここでわずかに客を乗せ、列車は日光方面へ。
このあたりから後ろからズルズル…という音が聞こえてきました。誰ですか車内でラーメン食べてる人は!(; ・`д・´)ラーメン食いたくなるやろ!
日光にお昼ごろ到着するダイヤということで、ラーメンに限らず車内に駅弁だの牛丼だの持ち込んで食べている人が結構おりました(牛丼チェーンの牛丼を持ち込んで食べている人がマジでいた。ちなみに中身チー牛ではなかった)。私も駅弁持ち込めばよかったか?と思うも後のまつり。
というか乗客の皆さんフリーダムすぎませんか???
列車は春日部を超えると車窓には住宅街に混じって田園風景が見られるように。
東武動物公園駅を低速で通過し、列車は日光線へと入っていきます。
ところでこれ前に撮った写真でして、このとき南栗橋にて運転停車していたんですよね。どうして南栗橋で運転停車していたのかは分からないですけど、せっかくなので運転停車の様子も撮ってみましょうkn
350系「ぶおぉ~ん!」(加速)
「ブワ~!」(南栗橋爆速通過)
私「嘘ぉぉぉん?!」
すっ飛ばしやがりましたよコイツ。いやわざわざ停まる必要性もないんですけどね。だとするとなんであのときは停まったんでしょう??
南栗橋を過ぎると、本格的に田園風景が広がるように。JRとの乗り換え駅栗橋は当然通過、右カーブで堤防に侵入すると利根川橋梁をガタンガタンと音を立てて通過、お情け程度に1往復分の列車が停まる板倉東洋大前も無慈悲に通過、列車はひたすら北へ向かいます。
渡良瀬川橋梁を通過します。
その後、普通列車の退避があるわけでもない新大平下を軽く通過し、高架を駆け上がると栃木駅に到着です。2面3線なので列車追い抜きができる…かと思いきや、中線は上り列車が折り返す以外に能のない駅です。
今度は逆に高架を下ると、新栃木駅へ。宇都宮線との乗り換え駅ですが、宇都宮線の列車は僅か5分前に発車済み。土休日臨だからね仕方ないね
朝夕にここを発着する特急が何本か設定されているものの、このうち東武日光側に抜けるのはきりふり号のみ。もしきりふり廃止となった場合、日中の新栃木停車列車は消滅してしまうのでしょうか?
新栃木~下今市間では数少ない特急退避可能駅、東武金崎を通過。
思川を通過。
新鹿沼に停車。前に乗ったときは気付かなかったんですけど、特急が停まるだけあって結構大きな駅なんですね。
新鹿沼を過ぎると、列車は山間に突入。栃木周辺から…正確には静和辺りから進行方向左側には山が見えていましたが、ここに来てようやく山間です。
終点までは残すところ30分を切っており、ここまで来たんだなぁという感じがします。
ここまで平地を走ってきましたが、ここに来て一気に勾配区間へ。列車内からでもわかるくらい車体を後方に傾けながら、列車は力強く登ります。
明神を過ぎると、東武線内唯一の山岳トンネルへ。…といいつつも、実質的には国道121号の立体交差。日光線は堀を掘ってそこに線路を通す形を採用しており、道路があったからここだけは仕方なくトンネルにした感じで、距離は短く一瞬で走り抜けてしまいます。
SL車庫が見えるとそこは下今市駅。
かつて特急が「特別急行」であった時代、ここ下今市駅は唯一の途中停車駅だったそう。確認する限り、100系登場当初の90年台にはこのかなり飛ばす停車パターンだったことが確認できましたが、現在は原則とうきょうスカイツリー・北千住・春日部・栃木・新鹿沼・下今市という途中停車パターンに変更されています。ちなみに複々線のおかげか所要時間は5分程度しか変わっていません。
勾配を力強く登り、左手にJR日光駅が見えると間もなく東武日光。
2時間の旅でしたが、30分単位で案外目まぐるしく景色が変化していくのもありあっという間という感じでした。
東武日光駅はY字に線路が分かれており、特急は進行方向右側の線路2本のどちらかに入ります。
停まる寸前、こんなものも。おそらくJR日光線の過走対策用の線路でしょうか、が見えていました。
そして列車は終点東武日光に到着。その小さな旅はもう終わっちゃったのか、と思うとなんだかしんみりしてきます。
せっかくなので列車の写真でも…って結構人多いな!
定期特急がまだ空いているにも関わらずこの列車に乗ってきた…すなわちマニアの人が結構いたということでしょう。入れ替わり立ち代わりで様々な人が列車の写真を撮りに後方までやってきていました。中に女性が混じっていたのが珍しいです。
引退の香り(?)を嗅ぎつけてやってきたのかな?ととも思いましたが、真相ははたして。
前面までやってきました。もうすでにテールランプをつけています。
続行でリバティけごんが到着。浅草発時点では22分差でしたが、東武日光到着時には12分差にまで詰められています。この列車はリバティけごん17号。下今市までリバティ会津117号を併結します。
ということで350系きりふり号、浅草→東武日光を完走してきました。この後の行動はさておき、帰りは6050系区間急行で帰宅しました。いくら350系はリクライニングしないといえど、急行型。6050系と比べるとさすがに快適さは上です。とはいえリクライニングしない座席、和式お手洗いとなると接客サービスとしては時代錯誤、そして現代の特急と言い切るには外装デザインがかっこよくないというのも致命的(※愛嬌はあると思いますし好きな人は好きだと思います)。車内サービスは改善すれば使えなくもないですが、車内デザインもやや陳腐化していることとそもそも老朽化していることを考えればもう廃車は間近でしょうね。350系自体、もう何度か故障を起こしてしまっているようです…
予備車のことを考えれば、しばらくは350系は使われることでしょう。ただ冒頭で述べた通りもう平日の定期運用を失っていて、しかもきりふり号だって他特急で代替可能な列車であることを考えるともう先は長くないと思われます。というか下手したら"部品取り"の名目での廃車が出かねません。
公式サイドから正式に引退が決定すれば、他地方からの鉄道ファンもおそらくは乗りにくることは間違いないでしょう。そして東武特急は全車指定席。もしも350系に乗りたい!という方は公式サイドからの発表がないうちに乗りに行くことを強く勧めます。
おそらくタイムリミットは新型特急のデビュー、および100系の余剰が出るタイミング。すなわち来年か再来年までだと思われます。
記録・乗車はお早めに!!
オマケ
廃止になった日光軌道の列車がここ東武日光駅前に移されていたので、せっかくなので写真を。通常時には中に入れません。
当時の床下機器までじっくり見られるので、機械マニアにはたまらない保存車両だと思います。
ところでコレ結構貴重な車両だと思うんですけど、こんなところに屋根も着けずに置いて大丈夫なんでしょうか…?流石に清掃保守管理はすると思いますが。
ちなみにその後、少し時間あったので乗り鉄して温泉入ってきましたが、その様子は気がノったら書きます。ただでさえ書き貯めが多いので、書かないかもしくは書いても遅くなるかもしれませんが…
旅ブログもよろしくお願いします↓
*1:そういう名前らしいメロディー。直訳すると「乗客」